過去の記事


 2020.7

 

相馬さん、尊厳の回復を求めて控訴

 地裁判決は解雇無効でしたが、相馬さんに対する陰湿で執拗なパワハラのすべてを否定して損害賠償請求を却けました。最も許し難いのは、相馬さんが以前から能力の劣った保育士で、担任を持たないフリーからクラス担任になったため問題を起こすようになったなどと相馬さんの尊厳を深く傷付ける判決だったことです。

 不当解雇との闘いは、解雇無効を勝ち取るだけでなく、解雇理由によって傷付けられた尊厳を回復しなければ勝ったとはいえません。相馬さんは、相馬さんの保育能力についての地裁判決の事実誤認と損害賠償を求めて、2月に高裁に控訴しました。

控訴審第1回口頭弁論、意外な展開に

 6月29日に控訴審の第1回口頭弁論が仙台高裁秋田支部で開廷されました。裁判官は民事担当裁判官3人の合議制です。裁判がひとりでは手に負えないか、社会的影響が大きいと判断される場合に合議制になるらしく、原告の相馬さんに不利ではありません。

 口頭弁論の第1回は、原告に控訴状と控訴理由書の法廷提出を、被告に答弁書の法廷提出を確認し、次回弁論日時を協議して、数分で終わるのが通例です。最近は2回目が判決言い渡しになることも珍しくないようです。できるだけ早く控訴審判決を得たいので、それを期待していました。

 ところが、予想外の展開になりました。裁判長が相馬さんの控訴理由書のある個所についてその趣旨を確認した後、園側代理人弁護士に対して相馬さんが提出した「2歳児まとめ」を2度も書き直させる必要性、理由が明確でないと言い、それを証拠に基づいて立証する準備書面の提出を求めました。

 「2歳児まとめ」問題が争点に

 相馬さんが2歳児クラスの担任だった2015年度の「まとめ」の園長の書き直し要求は、陰湿で執拗なパワハラのひとつでした。書き直して提出しても、どこがどうダメなのかは言わずただダメだのひと言。提出文書の理由なしの書き直し要求は、典型的なパワハラ手段です。
 2度も書き直し要求をする必要性、理由をいまになって立証できるのでしょうか。

 提出期限は7月21日。それに相馬さん側が8月21日までに反論の準備書面を提出し、次回口頭弁論が8月26日に開廷されることになりました。


  相馬和子さん解雇、無効の判決

  2020年1月24日青森地裁弘前支部

 

 園側は控訴せずとの通告があったので、解雇無効確定の見込みです。

 園側は、解雇から定年退職までの賃金とその延滞金利分を合わせて1,000万円以上を支払うことになります。正規保育士をリストラ・解雇で減らしながら、他方で働かせない保育士に多額を支払う羽目に。

 不当解雇との闘いの目的のひとつ、「不当解雇を高く付かせる」が達成されました。


 証人尋問に大挙して傍聴に来た園側は、判決法廷に被告の理事長、園長はおろか代理人弁護士も欠席。敗訴予想の判決を聴きたくなかったのでしょう。

 労組のビラ配布などは公益行為で正当

 園長・理事長らのパワハラに対して、相馬さんと三上千幸さんが損害賠償を申し立てました。対抗して、成田園長が労組のビラ配布や署名活動、ホームページ開設などで名誉を毀損され多大な精神的苦痛を被ったとして損害賠償を申し立てていました。


 判決は、認定保育園には公共的役割があり、ビラなどの内容は「公共的利害に関する事実に係るものというべき」で、労働組合活動の一環として行われたものであり、その目的の公益性、正当性も認められるとして却下しました。


 不当解雇保育園に対する労組の広報活動に公益性、正当性を認めた画期的な判決でしょう。

 


判決が2020年1月24日に言い渡されます。

 

 日時:2020年1月24日 13時20分開廷

 場所:青森地裁弘前支部2階法廷

 

 解雇無効を訴えてから3年。園側の引き延ばしによるダラダラ裁判にようやく判決が出ます。

 解雇無効は、仮処分申し立てに対するふたつの「決定」で認められています。これが覆ることは考えられません。焦点は、パワハラに対する損害賠償請求が認められるか否かです。

 

 不当解雇にパワハラはつきもの。解雇無効でもパワハラに対する損害賠償請求却下で裁判所が黙認する限り、パワハラはなくなりません。パワハラとそれを武器とした不当解雇が使用者のやり得に終わっている現状を変えることができません。

 

 

判決の解説・検討の市民ネット集会を開催します。

 

 1月24日の判決言い渡しは、解雇無効か否か、損害賠償請求を認めるか否かの主文だけ。判決理由は読み上げられず、閉廷後に代理人弁護士が書記官から判決文を受け取ることになると予想されます。

 その場で判決理由を明らかにすることはできませんので、翌々日の1月26日に判決を解説、検討する集会を開催します。

 

 日時:2020年1月26日 10時から2時間程度

 場所:青少年センター1階

 


 口 頭 弁 論

 2019.9月10月

 

 9月18日と10月25日に双方の証人尋問がありました。

  証人尋問は、予め提出されている「陳述書」にもとづいて、原告側・被告側双方の代理人弁護士や裁判官が尋問します。

 原告側証人は、相馬和子さんと三上千幸さんのふたり。被告のたんぽぽ保育園側は、理事長、園長、主任保育士、それに園長の娘の4人も申請。そのため、証人尋問は、2ヵ月間に渡り、2日とも午前午後の長時間になりました。

 

 この裁判の主役相馬和子さんが、弁護士の質問に、そうです、違います、記憶にありません、と簡潔に回答。好感を持った支援者が多かったようです。日常業務に対する園長のパワハラ、始末書要求に「自分が力がないからだと反省していた」との率直で素直な受け止めがとりわけ印象的でした。

 

 担当クラスの“気になる子M”への相馬さんの対応も解雇理由のひとつです。裁判官が「園としてMへの対応方針を決めていたのか」と尋問。主任保育士は決めていなかったと回答。園としてMへの対応を決めずに、相馬さんに対するパワハラ理由にしていたことが浮き彫りになりました。

 

 2016年9月15日に理事長名の退職を促す進退伺い指示書が相馬さんに渡されました。この指示書に対する尋問に、理事長は署名も捺印もした覚えはないと証言。念のため筆跡を確かめると、文章も署名も園長の字でした。

 しかし、当時理事長はこの文書にもとづいて相馬さんに退職を迫っています。いまさら覚えはないで責任を逃れられる話ではありません。

 

 これまでの口頭弁論にただのひとりの傍聴者もなかった園側から、突然30人近い傍聴希望。支援者側の傍聴者いつも30人近いので、21の傍聴席を50人以上が抽選で争うという、弘前地裁ではおそらく前代未聞の事態になりました。

 10月25日の証人尋問では園側傍聴希望者はさらに増え、全体で60人近くになりました。園側証人の応援に動員されたものと思われますが、午後の尋問にはほとんどいませんでした

 


7月2日 パワハラに対する損害賠償請求訴状を地裁弘前支部に提出

 訴えたのは、たんぽぽ保育園の元保育士、三上千幸さんと相馬和子さん。主任保育士だった三上さんは、パワハラの末に懲戒解雇をちらつかせて退職を迫られ、2015年8月に退職。

 損害賠償を求めたのは、保育園理事会と成田綾子園長。請求額は、理事会が各100万、計200万。成田園長が各50万、計100万。パワハラや退職強要、解雇は園長とその娘が主体でした。

 相馬和子さんは、地位確認請求申立と損害賠償請求との2つの裁判が並行します。解雇された労働者が解雇無効とパワハラに対する損害賠償とで争っても、裁判所は後者を認めませんでした。

 

 近年、最高裁がパワハラ・セクハラ防止の観点からパワハラ・セクハラ訴訟に積極的になり、流れが変わりました。

 福島県須賀川市の保育園で保育士12人が事務長のパワハラに対する損害賠償請求と懲戒解雇撤回で提訴。2013年8月福島地裁群山支部が懲戒解雇無効、12人のうち10人に計111万の損害賠償を命じました。解雇無効とパワハラに対する損害賠償請求を両立させた判決です。

 

 第1回口頭弁論(法廷)は、7月20日13時半から。地位確認請求申立に対する口頭弁論に続いて開かれます。

 


6月19日 第12回口頭弁論 裁判官が3人の合議制に

 

◆裁判官が3人の合議制へ変更の画期的成果
 
 5月17日の口頭弁論から、裁判官がこれまでのひとりから3人になりました。TVや映画で観るような法廷になりました。裁判長の左右に陪席裁判官が2人。
 裁判長は、伊東智和裁判官。地位保全仮処分申立以来担当の能登谷裁判官は陪席裁判官になり、もうひとりの陪席裁判官は若い女性裁判官です。
 
 裁判官がひとりから、3人の合議制になったのは?
 
 民事訴訟では、訴訟内容が複雑で裁判官ひとりで手に負えない、社会的に関心を持たれているなどの場合に途中から合議制に変更されることがあるようです。
 
 葛西弁護士は、毎回傍聴席を埋めるほど市民に感心を持たれていることは合議制変更の理由との見立てです。
 
 本訴だけで審尋2回、口頭弁論11回。いつも傍聴席を埋めるほどの民事訴訟が、地裁弘前支部に他にあるとは思えません。新たに赴任した総括判事の伊東智和裁判官が、市民に関心を持たれていることを重視したのかも知れません。
 
 変更理由がいずれであれ、合議制への変更は、地裁がこの訴訟を重視していることを示しています。闘いの画期的成果です。短時間の法廷に毎回来てくれる市民ネット参加の皆さんのおかげです。
◆5月17日の開廷(口頭弁論)で、訴えの理由(訴因)を変更しました
 
 これまでの裁判では「不当解雇撤回→地位確認請求」で闘ってきました。相馬さんは、2018年3月31日で定年になり、その後は確認すべき地位がありません。このまま地位確認を請求すると「確認すべき地位がない」と判決で棄却される恐れがあります。
 そこで、「不当解雇以降定年までの未払賃金請求」に訴えを変更しました。
 

地位保全求め仮処分提訴 解雇無効の地裁「決定」が2度

解雇無効の確定求め本訴 12月1日弘前地裁法廷で第1回口頭弁論

 

 2016年1124  弘前地裁に「地位保全と賃金支払い」の仮処分申立て

     12月19日 青森労働委員会で、園のパワハラ停止のあっせん成立

 2017 221  不当解雇と賃金の一部支払い命令の「地位保全」決定

 2017 223  保育園側「保全異議」申立て

 2017 421日 「保全異議」に対して再び解雇無効の決定

      5月11日 地裁「決定」を受け、解雇撤回の団交。園側本訴で闘うと拒否

     10月19日 解雇無効を求め本訴状を弘前地裁に提出

     11月24日 園側が答弁を先送りした紙1枚の答弁書提出

     12月1日 本訴第1回口頭弁論

 2018年1月17日 本訴第2回口頭弁論

     2月21日 本訴第3回口頭弁論

     4月13日 本訴第4回口頭弁論

     6月8日 本訴第5回口頭弁論

     7月20日 本訴第6回口頭弁論

     9月14日 本訴第7回口頭弁論

     11月2日 本訴第8回口頭弁論

     12月19日 本訴9回口頭弁論

 

 解雇無効の「決定」を2度勝ち取っていますが、あくまで「仮処分」。解雇無効を法的に確定させるためには、本裁判での解雇無効確定判決が必要です。解雇無効「決定」を受けて、解雇撤回を園に求めましたが拒否。園側も本訴で(最高裁まで?)争うようです。

 解雇無効「決定」は、労働契約法第16条に基づいています。解雇無効が覆るとは考えられません。

 


たんぽぽ保育園問題がひだまり会報に掲載されました!

 (青森県労連・個人加盟労組ひだまり会報2018年4月30日号)